「GM:家庭で充電できる車ボルト、リッター100キロ達成」
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090812k0000m020131000c.html
という見出しで新聞記事になっていますが、景気が悪いなかでもさすがGMはすごい技術を持っているのかな、と思った人も多いでしょう。ネット上の反応をみると、ざっと半分は疑う人、半分はGMの底力を再認識する人という感じです。
しかし、GMの記者発表資料、CNNの報道等、少し調べて、とっても驚きました。
まず、「ボルト」とはどのような車かというと、来年12月から製造、再来年初めから売り出される予定の、プラグインハイブリッド車です。ハイブリッド車の中でもシリーズハイブリッドとよばれる、エンジンとモーターとが直列のタイプでトヨタプリウス式の並列式とは違います。
ボルトの最大の特徴はプラグインハイブリッドで、つまり、プリウス、インサイトのようにエンジンで充電する他に、電気自動車と同様に外部から充電する/できます。充電池はリチウムイオン式の高密度のもので16kWhのものです。この電池にフルに充電すると40マイル、64kmの走行が可能です。電池のエネルギーが25%程度に減るとエンジンが動いて充電します。
ボルトのエンジンは1.4Lのガソリンエンジンで、充電のための発電専用で、プリウスのように走行パワーが必要なときにバッテリーと併用する、ということは出来ません。その一方、発電専用なので発電の効率は良いはずです。
プラグインハイブリッド車なので、通常夜間などに充電しておき、まず64km以内の用途はバッテリーのエネルギーのみで走行します。通常の通勤などではこれだけで済む場合も多いでしょう。もっと遠くまで行く必要があるときには、ガソリンエンジンで発電しながらモーターで走るのです。
さて、このような車の燃費をどのように示すべきか、これが問題です。
プリウスではガソリンだけを使っているので、普通にLあたり何kmといって通常のエンジン車と比較できますが、電灯線から充電する電気自動車では「電費」というkWhあたり何kmという言い方をしなければなりません。プラグインハイブリッド車では、両方の要素があるので、どのような走行をする場合に、電費と燃費がいくらといくらと言わないと意味がありません。(ガソリン車でも10モードなど走行モードで基準を作っているわけですがもっと複雑になる。)
ボルトで夜間にフル充電をして、通勤で片道32km、往復64km(40マイル)を走行してガソリンをまったく使わなかった場合、燃費∞km/Lということになります。電気はフル充電分16kWh使ったということで電費は64km/16kWh=4km/kWhとなります。アメリカでは3セント/マイル位で64km、40マイルでは1.2ドル、150円程度で済むということです。なお、下のCNN Moneyの記事ではフル充電分デトロイトでは夜間料金で40セント、一般には88セント程度と出ています。
さて、新聞記事にあるリッター100kmというのはどのようにして出したものでしょう。日本の新聞では詳しいことは書かれていません。GMの広報資料にはEPA(環境保護局)で検討中のプラグインハイブリッド車の燃費に関する新基準を使って出した値と言っています。
CNNのビジネスサイトCNN Moneyの記事によると、「50マイル走ったとすると、最初の40マイルはガソリンを使っていない、最後の10マイルで0.2ガロン使う。そこでガロンあたり250マイルとなる、80マイル走った場合は100mpg、300マイルなら62.5mpg…」という驚くような単純な話が出ています。
http://money.cnn.com/2009/08/11/autos/volt_mpg/index.htm?postversion=2009081108
(この記事が正しいという保証はないですが、)本当でしょうか。プリウスなどの燃費から考えて、急に100km/Lという燃費が達成できるはずはないので、本当あるいは似たような考え方で出された数字でしょう。
ボルトのハイブリッド走行での燃費は50mpgだそうでLあたり21.7kmと、プリウスよりやや悪い程度です。特に悪い数字ではないですが、Lあたり100kmという数字を聞いたあとでは、多くの人に詐欺的な数字ではないかと驚かれるでしょう。
まもなくプリウスハイブリッドが企業向けに発売されますが、この方式だとおそらくボルトより大きな数値が発表できることになります。GMは、こんな姑息な数字を大々的に発表して幻想をふりまいて何をするつもりでしょうか?日産が「リーフ」であまり現実的でない夢、誤解を振りまいているのと同様の危うさを感じます。
GMには米政府が大金をつぎ込みましたが、こんなことをやっているようでは再建は難しいのではないでしょうか?また、よくあることですが日本の新聞の報道はわざと誤解を生むように書かれているようです。センセーショナリズムですね。
「追記8.13」ライブドアニュースにもなっているレスポンスというサイトの記事がまともに評価できているようです。
http://response.jp/issue/2009/0812/article128354_1.html
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