2009年6月29日月曜日

Ex319での熊野海盆における「ちきゅう」の活動状況について

私は直接地球深部探査船「ちきゅう」による探査に係わっているわけではありませんが間接的な関係者の一人です。掘削の話は門外漢には難しく少しずつ勉強しているところなので、「ちきゅう」の活動状況についてメモを残していきたいと思います。誤解などもあると思いますので、その際にはご容赦ください。

「ちきゅう」の一般的な紹介としては、下記の「塩屋天体観測所」というサイトでの紹介(地球深部探査船「ちきゅう」(1)(2)(3))が写真も豊富でわかりやすいと思います。
http://www.h2.dion.ne.jp/~kazuf/sao/paorep/chikyu01.htm

現在「ちきゅう」の319次研究航海(南海地震発生帯掘削計画ステージ2の最初)が始まっており、デイリーレポートが送られてきています。
http://www.jamstec.go.jp/chikyu/jp/Expedition/NantroSEIZE/sp319_dr.html

今回、IODP(統合国際深海掘削計画)で初めてライザー掘削が行われます。一昨年、ステージ1が行われました。「ちきゅう」によるライザー掘削は試験は何回か行われていますが、IODPのために使用されるのは今回が初めてです。すばらしい成果を期待したいと思います。

いろいろトラブルがあって対処のための時間がかなりかかったようですが、結果的に数日遅れでライザーを使った掘削が始まったようです。デイリーレポートに基づいて経過をまとめてみました。

5月19日に掘削地点(C00009A、NT1-11地点、熊野海盆)での最初のジェットインで36インチ(90cm)パイプを設置して開孔ました。海底直下の柔らかい地層を、ホースの先から勢いよく水を出して孔を開けながら孔の中にホースを押し込んでいくという感じで、36インチパイプを海底下54.5mまで入れています。試料やデータはほとんど何も取れません。この浅い部分については、事前にライザーを使わない方法で試料が採取されています。

次に、その中から26インチ径のドリルビットで海底下700mまで掘削されました。
この26インチのドリルビットはマッドモーターという泥水の流れで回転させる仕組みです。24-26日で712.7mまで掘削されました。このときにはMWDという計測を行っています。

6/3に、20インチ(51cm)ケーシングパイプを設置し、セメンチングを行っています。ケーシングパイプは孔壁が崩れないようにするためのものです。セメンチングは20インチのパイプと26インチ径の孔の壁の間にセメントを入れてパイプと地層を固定します。

その後、BOP(暴噴防止装置)とライザーパイプの降下、BOPの設置の作業が行われましたが、いろいろトラブルがあって大変だったようです。トラブルはライザーを吊っているライザーテンショナーとBOPで生じました。ライザーパイプは坑井の海底部のウェルヘッドという36インチ(コンダクター)パイプの頂部の固定装
置に取り付けたBOPに接続されて、2000m上の「ちきゅう」のやぐらまで伸びて吊られています。ライザーパイプは水中ではほとんど重量はないと思いますが、海水の流れで曲げられたりするので、吊る力の方で調整しなければなりません。

最終的にBOPが設置されて孔井と「ちきゅう」がライザーパイプでつながったのが6/24のようです。

掘削パイプ、ライザーパイプと、井戸の中はこれまで海水が入っていましたが、掘削泥水に入れ替えられ、今後はこの掘削泥水が循環します。6/25に掘削が始まりました。

今後1510mまで12.5インチの径で掘削され、その後1510-1600mまで10インチのコア試料採取用のビットでコア試料が90m採取される予定です。このサイトでのコア試料採取はこの90mの区間だけで、その他の地質試料は掘削時に泥水と一緒にあがってくる削りくず(カッティングス)と、泥水に含まれるガス程度です。この掘削、試料採取は順調であれば1週間で終わります。

その後、検層、17インチビットで拡掘し、13-3/8インチケーシングの設置をして、検層を行い、上からケーシングハンガーとセンサーを設置して、BOP、ライザーを回収、ふたをして、この場所での作業終了となります。

この坑井は、今後孔内の物理化学的なモニタリング、将来の実験などに使われます。

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